余薫記

感想を書いてる

李闘士男 監督/坪田文 脚本「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」(2018年)

現在上映中の映画ですね。少し前になりますが母の好きな俳優のひとりが安田顕さんなので、連れられて私も試写会に行ってきました。Yahoo!知恵袋に投稿された質問が話題を呼び、それが映画になったというのだから驚きです。ハリウッド映画みたいに劇的なシーンはありませんが、深く考えさせられる台詞が多く、個人的にとても好きな作品です。ネタバレしないように書くつもりでしたが悪しからず、ある意味ネタバレしてしまってるかもしれません(笑)

 

 

題名からも読みとれる通り、「夫婦」がテーマの作品。

 

夫婦に必要なものって何なんだろう。もちろん「好き」同士で恋人になって夫婦になるんだから、「好き」っていう感情的な要素は絶対必要だと思う。でも一緒に生活していれば必ず自分と異なる点、合わない点は出てくるはず。嫌いになって離婚する可能性は大いに有り得るのに、人はなぜ結婚するのか?

 

 

榮倉奈々さん演じる妻・ちえの発する台詞のひとつひとつが深い。一度聞いただけだと単なる「不思議ちゃん」の発言にしか聞こえない。考えさせられるような台詞が多かった。そしてこの映画を観終わってから、それらをもう一度頭の中で咀嚼してみた。

 

 

 

夫婦に必要なものは「そばにいたい」って気持ちなんだと思う。「恋」と「愛」の違いは何だろうか。恋が「好き」という意味なら、愛は「長所も短所も受け止めて、一緒に居たい」気持ちなんじゃないのかな。真実か否かは別として、夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したのは有名な話だよね。(実際は「我君を愛す」と訳した生徒に対して、「日本人はそんなことは言わない。月が綺麗ですね、とでも訳しておきなさい」と言ったのが真実らしいけど……ネットで軽く調べただけなので気になる方は調べてみてください。)

 

 

そして「I love you」なのに、なぜ月に言及しているのか。国語の授業で習った時にそう疑問に思ったはずなのに、自分の中でこの謎を随分長い間置き去りにしていたらしい。だから二十一歳の今、自分なりの解釈をしてみたい。ものすごく綺麗な景色を見たとき、もし大切な人が居たら「あの人にも見せてあげたい」って思うんじゃないのかな。「月が綺麗ですね」という言葉は、「この月を君と一緒に見て気持ちを共有したい」を意味していると私は思う。

 

「気持ちを共有する」ためには「君と一緒に」見なければならない。だから「月が綺麗ですね」と相手に呼びかけている。

 

 

私の母国語は日本語だけだし、「I love you」が英語でどのようなニュアンスを持つのかはわからない。

 

ただ日本語の「愛してる」はストレートすぎて重過ぎるように感じるし、そう思う人は多いだろう。わかりやすくていいのかもしれないが、その言葉にはそれ以外の意味は含まれない。奥ゆかしさを美徳とする日本人らしい表現ではない、だから夏目漱石は「月が綺麗ですね」と訳させた。なぜなら、この言葉には遠回しに二重の意味が含まれるから。単純に月を楽しむ気持ち、そして「そばにいたい」という気持ち。

 

 

 

何か前にも同じような事を書いた気がするけど、自分以外の人間を100パーセント完全に理解するなんて不可能だと思ってる。

だって他人について考えるとき、「私」というフィルターを通してでしか相手を見る事はできないから。だから大事な人たちが悩んでいる時、悲しみを和らげたくても「わかる」という言葉はなるべく使いたくない。だって相手の苦しさなんてわからないもん。私が想像する以上に苦しんでいるかもしれない。経験したことのない苦しみなら、私は推し量るしかできない。聞いてあげることしかできない。でもそばにいてあげることは出来ると思う。

 

 

 

 

だからこそ異なる人間を理解するなんて、すごく難しいと思うんだよね。

生きてきた背景が違えば、趣味や思想も異なる。「理解したい」「理解してほしい」って頑張れば頑張るほど、相手が見えなくなってきて疲れるんじゃないのかな。だからこそ夫に対してちえが答えた「頑張らなくていいんです」っていう言葉は、すごく考えさせられた。妻であるちえの行動の意味を必死に理解しようとする夫の姿は、カップルや夫婦の間でよくある光景なんじゃないかな。妻を理解したいのにわからない、何か俺に不満でもあるのだろうか。そう問い詰める夫に対して発した言葉。最初聞いたときは「は???」と頭の中にハテナが沢山浮かんだけど、映画を見終えてから全てが繋がった。この台詞、とっても好きです。

 

 

 

「月が綺麗ですね」

この映画を観るまでは、こんなに素敵な言葉だとは思いませんでした。ちえのように懐の大きい女性になりたいものです。幼稚な私にはまだまだ遠いんですけどね~~すぐ感情的になるし頑固だし(´・ω・`)

 

 

もっと精進せねば……ん~~頑張ろう👐