余薫記

University Student in Kyoto

【音楽】星空に人生を追憶する ー中島美嘉『WILL』(2002年)

古代ギリシアではかつて、宇宙の調和が音楽を奏でているとする「天球の音楽(music of the spheres)」という発想があった。その研究をしていたのはピタゴラス、彼は音楽や宇宙の中に数学をも見出した。古に思いを馳せた時、彼らも同じ星空の下で思索に耽っていたのだろうかと思うと感慨深い。



幾千億の恒星たちが放つ光、
それらはどれも過去に輝いていたものだ。



太陽の次に明るいおおいぬ座シリウスは、オリオン座のベテルギウスと共に「冬の大三角」を作ることで有名だけど、あのシリウス約7年前の光らしい。
参考:星の光はなぜ7年後のが、ボク達に見えるんですか?│その他│宇宙科学研究所キッズサイト「ウチューンズ」



見上げれば、過去が私たちを照らしている。





(画像:pixabay.com)



今回考察するのは、
中島美嘉さんが歌う『WILL』だよ。✳︎✴︎


タイトルは「意志」を意味する。
動詞を伴って未来形で使用される事が多いけど、
今回は名詞として使われているね。


そしてなんと秋元康さんの作詞らしい。
その商法には賛否両論あるものの、彼の作詞は心に響くものが多くって結構好きだったりする。


WILL

WILL

  • 中島 美嘉
  • J-Pop
  • ¥250

参照:WILL 中島美嘉 - 歌詞タイム


青春時代を思わせる歌詞で始まる1番。
無数に存在していた可能性への信頼、友達と切磋琢磨して共に夢を追ったこと、そして甘酸っぱい恋愛の思い出だろうか。この時期はありとあらゆる夢を見る。



「瞳を閉じて見る夢」も、
「瞳を開きながら」見る夢も



後者はいわゆる“将来の夢”だろう。
気付けば私も成人を迎えて大人になってしまったけど、子ども時代はたくさんの夢を抱いていた。


外国に行ってみたい、
プール付きのお家に住みたい、
警察官になりたい、
パイロットになって空を飛びたい、
航空管制官になりたい、
国連で働いてみたい……とか


ほとんど“職業に関するもの”だけどね(笑)



(関係ないけど、“将来の夢”って職業を答えなくてもいいと思うんだ。「こういう人間になりたい」「こんな能力を手にしていたい」とかいう選択肢もアリなんじゃないかな?)



それからサビはこう続く。


あれから 僕はいくつの
自由を生きてきただろう
運命の支配じゃなくて
決めてたのは
僕の“WILL”


夜空に輝く星々と同じくらい、私にはたくさんの選択肢があった。未知なる可能性が散りばめられていた。もちろん環境や健康ゆえに、自分の思い通りにならなかったことも多い。でも全てを運のせいにしてもよいのだろうか。いや、今歩んでいるこの道は、自分自身の“意志”に基づいて決めたものじゃないか。紛れもなく、過去の私が下した判断だ。運命に従わないといけない部分もあったけど、いつも決めていたのは私自身だった。





サビが終わり、2番に続く。

(省略)
光のない
闇のどこかに
まだ見えない
未来がある


星空の隙間に広がる闇の奥にも、宇宙は広がっている。その夜空の向こうには未知なる星や銀河の数々が輝いていて、遥か遠くで膨張し続けている宇宙の果ては、まだ謎だらけ。


まるで人生のようだ。
いつも先は見えず、謎に満ちている。



そしてこの歌詞が来る前に、“既に見つけられた星たち”についても言及している。だからこそ、ここの歌詞はこうも解釈できるんじゃないかな。「何も見えない闇の中にこそ、新しい発見がある」と。


参照:宇宙が予想以上の速さで膨張している可能性-既存理論での説明不可能 | マイナビニュース




(画像:photo-ac.com)


そして2番のサビに入る。

記憶が星座のように
輝きながら 繋がる
バラバラに見えていたけど
今ならわかるよ WOW WOW
記憶が星座のように
ひとつになって教える


人生にはあらゆる出来事があり、それが喜怒哀楽の感情を生み出してきた。その瞬間は何も意味を成してないように思える。でもふと過去に思いを馳せたとき、それらは何一つ欠けてはいけないものだったと気付くんだよね。バラバラに散らばった星屑は全て伏線だった。それらは星座のように、頭の中で一気に繋がるときがある。「ああ、あの出来事があったからこそ今の自分がいるんだ」ってね。




ひとつの星座、
ひとりの人生。

これらは似ているように思うんだ。



地上から見える星が発した過去の光。
それらを繋げたものを、
人は「星座」と呼ぶ。


ある人における日々の積み重ねを、
人は「人生」と呼ぶ。





オリオン座。「冬の大三角」で有名なベテルギウスは一番左端にある。(画像:pixabay.com)





そして「変わらない永遠」……




この歌詞にはそう書いてあるけど、私は「永遠」なんてものは信じていない。さっきも書いたけど、地上から私たちが見ている星は、過去の恒星が発した光だ。冒頭で挙げたオリオン座ベテルギウスも、もうすぐ超新星爆発してその命を終えると言われている。まあそれが見られるとしても、私たちが見る爆発は約640年前のものなんだろうけどね(笑)



夜空に輝く星々にも寿命があるのだ。
もちろん私たちの命も、いつかは終わる。



まあ確かに人間のそれに比べたら、星の一生なんてものは遥かに長いから「永遠」に思えるかもしれないね。物事は永遠に続かないからこそ、今この瞬間は尊い早かれ遅かれ人生には終わりが来る。大切な家族や友人に別れを告げるべき日がいつかは来る。だからこそ今を大切にしたいんだ。まあなかなか思うようにはいかないものだけどね…(笑)


どうせ死ぬのなら、
自分の望む未来を生きたいと思う。





Nothing is permanent....
星空も人生もいつか終わるからこそ、美しい。